自己愛性人格障害と国際離婚

自己愛性人格障害者と離婚する決意をしながらもまだまだ決着がつかない海外在住者の独り言です。

申し立てと新たな敵

子どもたちの出国禁止命令、つまりストップリストを掛けた相手に、

私と弁護士さんがまず最初にした申し立ては、

相手に家から出ていってもらう申請であった。

 

私はというと、てっきりすぐに離婚申請をするものかと思ったのだが、

私の弁護士さんは、まず生活を共にしないための申請をすると説明した。

確かに、離婚を決意し表明してる者がその相手と暮らすのはおかしい。

私が子どもたちを連れて出ていくことも可能だが、

相手の度重なる脅迫行為、言葉の暴力、及び子供への身体的暴力を

考えて、私たちは今のところに残り、相手を追い出すのは、

当然のことであると、弁護士さんは言った。

 

相手はきっと出ていかない、と思う。

と、私は弁護士さんに言った。

きっといろんな理由を言って、出ていかないと思うと、言った。

 

「だからこそ、裁判所に判断を委ねるんだ」と弁護士さんは答えた。

「君と子どもたちが毎日を平穏無事に暮らすことを確保しなきゃいけないんだ。

この申し立ては、当然の権利なんだよ。」と、弁護士さんは私に言った。

 

それから、私は弁護士さんに今までの結婚生活を事細かに話した。

それを弁護士さんは纏め、裁判所に提出。

そして、暫くして相手がそれを受取り、相手からの反対弁論を待つことになった。

 

相手からの反対弁論は嘘まみれであった。

私は絶句した。

自分には非がない、全て私が悪い、という弁論であった。

 

ここであらためて、自己愛性人格障害の恐ろしさを知った。

そういえば、今まで調べてきた自己愛性人格障害のサイトに書かれてあった。

 

勝ち負けに異常にこだわる。

勝つためにはどんな手段も厭わない。

全て自分の都合のいいように脳内で書き換える。

自分にとって都合の悪い事実は忘れ、脳内で書き換えをする。

被害妄想。被害者意識。

 

 

相手の反対弁論は全て、自分を優位に立たせる言い訳に終始していた。

 私はとんでもなく酷い女に仕上がっていた。

 

相手が言うところによると、

私は、

アル中だそうだ。

(私は缶ビールひとつ以上は飲めない)

うつ病を患っているそうだ。

(私は毎日規則正しく生活し、家事も仕事も人間関係もちゃんとこなしている)

うつ病のせいで、ナイフやフライパンを投げるそうだ。

(私は子どもたちにいつも、投げていいのはボールだけ!と言っている)

過去に性的虐待を受けたことがあるそうだ。

(そんな事実はない)

月にかなり稼いでいるそうだ。

(家事と並行しての在宅での仕事なので、本当に少ししか稼げていない。)

 

 

相手はこんな嘘を並び立てた上で、

自分のことを

うつ病の私をサポートしてきた、と訴えた。

うつ病になった私をサポートしたせいで、

自分が病気になった、と訴えた。

働きたかったが、サポートが大変だった、と訴えた。

子供に暴力を振るっていないと、訴えた。

警察に電話したのは、僕を陥れるために私がしたことだ!と訴えた。

私の家は金持ちだ、と、言い出した。

僕はお金がない、と訴えた。

僕は頑張ってきた、

我慢してきた、耐えてきた。

家族のために尽くしてきた、と訴えた。

だから僕を追い出さないでくれ!と反対弁論に書いてきた。

 

弁護士さんに全てを訳してもらって、私は頭がクラクラした。

そんなに酷い女なら、とっとと自分から離婚申請すればいいものを‥

それでも離婚しない、と反論する相手にとことん嫌気がさした。

 

 

「君の家が金持ちで、僕はお金がないとか、何なんだ?」と、

私の弁護士さんは苦笑した。

「ナイフとか投げてないよね?」と笑いながら、弁護士さんは聞いてきた。

 

「同じ国民としてだけでもなく、君の夫としてだけでもなく、

子供の父親としてだけでもなく、男としてだけでもなく、

人間として恥ずかしいよ」と、弁護士さんは吐き捨てるように言った。

 

子供への暴力があった時、ご近所さんが連絡してくれて、警察が来てくれた。

しかし、私はその時、相手をかばってしまった。

かばえば、もう二度と暴力はないだろうと思ったのか、

その場を早く終わらせたかったのか、

私がその時どういう心理にあったのか、正確には説明できない。

ただ、もう何もかも嫌だったのかもしれない。

考えることも、何もかも。

 

あそこで、ちゃんと警察に突き出してさえいれば‥と、弁護士さんは言った。

きっともう暴力は振るわないだろう、

あそこで暴力が認定されていれば、すぐに追い出せたのに‥

と弁護士さんは残念そうにそう言った。

 

家から追い出す裁判の第一回目は私が負けた。

相手は次の裁判まで出ていかなくてもいいことになった。

 

相手は喜んでいた。

 

俺に敵う者などいるものか!

お前の弁護士は、大したことないな!

俺の弁護士のほうが強いって分かっただろう!

とっととこんなくだらない事は止めるんだ!

金の無駄だ!

それにこれ以上、俺に恥をかかせるんじゃないぞ!

お前のせいで、俺は自分の国で恥をかくところだっただろ!

この俺を裁判所に突き出すとはなんて酷いやつだ、お前は!

 

何を言われても私は黙って聞いていた。

自己愛性人格障害者は、議論が好きだ。

あれやこれやと詭弁を並べ、自分の手の内に相手を持ってこさせようとする。

散々長く暮らしてきたから、よく分かっていた。

 

何を言われても、私は

騙されないぞ!

負けないぞ!

と、心の中で強く思っていた。

 

弁護士さんからの提案で、一度この、家から追い出す裁判を

取り下げることにした。

このまま進めても、一度負けてる私たちに勝ち目は低いからだ。

私も了承した。

取り下げてはいるが、終わりにしたわけではない。

また違う理由で、もう一度同じ裁判を出来る。

 

夏休みも近くに迫っていたため、子どもたちのためにも

表面上は保留にするほうがいいと思った。

 

 

またするかもしれない、しないかもしれない。

それでも、まだこちらがそのカードを持てるのは良いことだ、

と、自分に言い聞かせ納得した。

 

本当はすごく悔しかった。

なんで、裁判所は信じてくれないのか?

やっぱり外国人の私は不利なのだ。

そう思った。

私がアル中かどうか、調べてほしい。

 私がうつ病かどうか、見極めてほしい。

なぜ、私の意見だけは重要視されないのか?

そう思えて仕方なかった。

 

私の敵は、離婚したい相手だけでなく、この国の裁判でもある、

と思うようになった。

 

実家の母もがっかりした。

子供たちもがっかりしていた。

自分が外国人である、というのを

まざまざと突きつけられた、そんな感じが否めなかった。

 

見える敵と見えない敵、その二つとの闘いになる、と思うようになった。